『ワンダンス』のドイツ語版が2022年9月に発売され、日本から遠く離れたドイツの地でも話題沸騰中です!
手がけたのは現地の出版社Cross Cult。デザイン性の高さに定評のある出版社で、『ワンダンス』の他にも数々のアフタヌーン作品がCross Cultからドイツの漫画ファンに届けられています。
ドイツ語版第1巻の発売を記念して、現地の漫画情報サイト「Manga Passion」が作者・珈琲氏のインタビューを公開しました。
『ワンダンス』の制作秘話から漫画家を目指した経緯まで、珈琲氏の創作活動に迫る濃密な内容が好評を呼んでいます。
ワンダンスドイツ語版の発売に伴ってドイツのインタビューも受けました
— 珈琲 (@ccffeee) 2022年10月6日
描くのにに使ってるツールや
参考にした書籍の話など
ありがとうございます https://t.co/qlvwCDVEJ4
こちらこそありがとうございます。
先生は「珈琲」というペンネームで活動されていますが、どのように思いついたのでしょうか? 珈琲がお好きなのでしょうか?
本名の音を含んでるというのと、本名の漢字が難読でわかりにくいために、初対面の人に口頭で説明するのにいつも苦労していたため、逆にペンネームは誰にでもわかるような一般名詞にしたいと思ってました。
個人的に漢字2文字の中で一番カッコイイ2文字が「珈琲」だと思っております。コーヒーも毎日飲んでいて、特に仕事中は必要です。以前は1日10杯ほど飲んでいたのですが、慢性的な眠気を感じるようになったため、しばらく脱カフェイン生活をしました(離脱症状の頭痛がひどかったです)。1か月ほどコーヒー断ちに成功したのですが、久々に飲んだら美味すぎたため、結局今も1日5杯くらいは飲む生活に戻っています。アルコールやタバコはあまりやらないですがカフェインだけは愛用してます。
15歳の頃にダンサーを目指し19歳くらいまでやっていましたが、実は音楽的なセンスも身体を動かすセンスもあまり無かったことに気付き、挫折しました。何か他のクリエイティブな職業に就きたいと思い、もともと読むのも好きだったので漫画を描き始めました。たまたまそれが向いていて気が付いたらプロになっていました。
10代の頃は漫画読者として「ストリートダンスの漫画があればいいのに」と常々思っていましたが、なかなか成功していると言える作品が無かったのが歯がゆかったのと、やはり実際にストリートダンスを漫画で表現するのは難易度が高すぎると思っていました。ですが、28~29歳のころに次の新作を描かなければならない状況で、自分の経験を活かせる題材の中でダンス作品を想定してみたときに「今だったらやれるかもしれない」というインスピレーションがあったので、挑戦してみました。
とにかく「他人と違うことがやりたい」と昔から思っていました。僕のいた田舎ではダンスをやってる人間が当時ほとんどいなかったので、DVDなどを観て始めました。のちにスタジオに行ったり大阪に出てきたりして教わっていました。
長くやってたジャンルはLOCKIN'、POPPIN'です。ダンスをやっていたのは中学校では僕だけで、高校では3人ほどいました。なので、当時の僕がその質問をされていたら、おそらく答えは「周りがやってないから」でしょうか?今だったら「楽しいから」くらいだと思います。
ある程度のジャンルはダンサー時代にかじっていたので、初歩的なステップや雰囲気は掴んでおりますが、深い部分の音取りやダンサーのエピソード、あるあるなんかはダンサーさんに話を聞いて描いております。特にJAZZ、KRUMP、VOGUE、WAACKIN'あたりはほとんどやったことがないので今後も取材したいと思っております。
連載初期は取材の際に撮らせてもらった映像や、ダンサーさんからもらった写真などを参考にしていました。後半からは、自分でポージングを撮ってそれを下描きにしたりしています。特に男性キャラのダンスシーンはそのやり方が多くなっています。
1巻あたりの初期はそのあたりには気を遣っていて、踊りやすい曲でかつ認知度の高い曲を選んでおります。ポピュラーで、かつYouTubeで色んなスタジオが振付動画などで使っているような曲をリストアップし選んでいました。いきなりコアすぎる曲を選んでも一般読者が入り込めないかもしれないと思いましたので。
最近はあまり気にせず、ダンサーの間で人気な曲なども選んでおります。ありがたいことに、読者の方の中にはSpotifyやApple Musicなどで作中の楽曲リストを作り、聴きながら読んでいるという方が結構いるのですが、僕が選んだ曲がSpotifyに無かったりして嘆かれたりすることもあります。
だいたい毎月初旬ごろが原稿締め切りなのですが、その直後から翌月の話づくりが始まるとして、~15日あたりで小さいノートに小さいネームをフリクションボールペンで描き、~20日あたりでWacom Mobile Studio Pro 13とCLIP STUDIOを使ってネームを清書し、編集者にチェックしてもらい、~27日あたりでアートカラーのA4原稿用紙に普通の2Bのシャーペンで下描きを描きます。ダンスシーンの下描きは自分でポージングなどを撮影して、残りの日数でペン入れ、仕上げ作業をしています。
コワーキングスペースで描くときはWacom MobileStudio Pro 13、家で描くときはPCとWacom Cintiq 16 FHDで作業しております。気分が乗る場所を探して、作業場所をよく変えながら作業しています。
たくさんいます。
ワンダンス1話は当時、編集者と当時流行っていた海外ドラマの『glee』の1話を観て参考にしています。吃音をエンタメに昇華する姿勢に関してはスキャットマンに感銘を受けています。これは作品としてというより僕個人の感覚なので、一応作中にスキャットマンも出ていますが今後ダンスとして絡んでくるかはわかりません(笑)。
ダンサーとしてはLes Twinsのスタイルがかなり好きです。双子でしかなしえないコンビネーションとフィジカル、ずば抜けた音楽性とオリジナリティでHIPHOPというよりもはやLes Twinsというジャンルを作りあげたのではないかと思います。
ダンスシーンの描写に関しては、けん玉を題材にした読み切り漫画『DAMAISM』を初期はかなり参考にしました。ラフな線でスタイリッシュに描かれており、今でもときどき読み返しています。
また、ダンスシーンでの描写は『コンセプトアーティストのための人体ドローイング』という本を参考にしたりもしました。僕と同じくデッサンや専門的な絵の知識が無くプロになった絵描きの方が、あらためてデッサンを学んでから書いた本なので、境遇が似ていてわかりやすかったです。
今まではそんなことなかったんですが、『ワンダンス』を描き始めてからなぜか「漫画家になりたいのですがどうしたらよいですか?」というメッセージがSNSでときどき来るようになりました。
あと、今までの作品では著名人の方が読者だと名乗り出てくれることはほとんどなかったのですが、『ワンダンス』に関しては色んなミュージシャンや芸能人の方などが各所で発信してくれるようになってくれて嬉しいです。
他には、壁谷というB-BOYのキャラの「マスク目隠しムーヴ」を実際に踊って、その動画を送ってくれたB-BOYの方なんかもいて、漫画的だと思っていたことが実現できることに感動しました。特にB-BOYの人達は不可能と思われることへの挑戦意欲が凄いなと思います。
また、ダンサーの人に取材をしたときなどに、実はこの漫画を読んでレッスンでの説明の仕方がわかったとか、学校卒業の進路に悩むタイミングで勇気をもらったと言ってくれた方たちもいて、感動しました。
おそらくこの漫画には日本独自のダンスシーンの文化なんかもあるでしょうから、ドイツのダンス文化とは違った面もあるかと思いますが、その違いも楽しみながら読んでいただけると嬉しいです。個人的な感覚ですがドイツの映画などを観ているとけっこう性格的な意味で日本人と似ているなと感じることが多いので、キャラクターへの共感ポイントが多かったら嬉しいです!
以上、皆様お楽しみいただけましたでしょうか?
『ワンダンス』の日本語版は最新9巻が発売中です。そちらもぜひよろしくお願いします!