今年も高いレベルの作品が大変多かったですね。人間の描き方に圧倒されるような物語、センスに富んだ画面づくりや、、絵からにじみ出る作者の熱量――非常に鮮やかで色とりどりなタペストリーを眺めているような気持ちでした。ただ、明るい話よりも暗い話が多かったのは偶然でしょうか。楽しいだけがエンタテインメントじゃないし、それがその人が心から描きたいものなら文句は一つもない。「『アフタヌーン』はこういう雑誌だから」「四季賞はこんな作品を好むから」に縛られないでほしい。あなたの思う最高の作品を、これからも楽しみにしています。
趣味でマンガを描くことと、プロ漫画家を目指すことの間にどんな隔たりがあるか。料理に喩えるとわかりやすいのですが、料理の腕がよくても冷蔵庫の残り物だけを使っていてはその料理でレストランは開けません。マンガで言うと、作者の半径100メートル以内に存在する事象だけで物語を構成しようとすると、描けることに限界が来ます。プロを目指すのであれば、自分から縁遠い事象に興味を持ち、調べ、わからないことは想像力を駆使して補完する、そんな工程が必要です。大賞受賞の『遭難のリトルシェパード』はまさにそんな作品です。作者の調査力と想像力を味わってみてください。
賞金100万円+Intuos Pro Medium
遭難のリトルシェパード
三池画丈(32)
64ページ
選考のことを忘れて、大変楽しく読みました! 青春群像劇かなと思ったら、全世界を巻き込む、とんでもスケールの話に発展していく様がすごくスリリングだったし、キャラクターたちは魅力的、どのコマに何の絵を入れる画面づくりのセンスも抜群。私が何よりも評価したいのは、四季賞という勝負所で臆することなく、個性丸出しの作品で挑戦してきた作者の勇気。皆さんも是非是非ご一読を。
映画を見たり、模型を集めたり、ポーズを研究したり、深夜の街をロケハンしたり…楽しい時間でした。その上このような栄誉までいただいて、本当に幸せです。だから漫画はやめられません。ありがとうございます!
賞金60万円+ワコム製ペンタブレット「Wacom Intuos Small ワイヤレス」
道化の花
藤田治(24)
18ページ
ストーリーも絵もよくて、読み切りとして非常に完成度の高い、素敵な作品でした。個人的な好みかもしれませんが、本当にもどうにもならない恋が、どうにもならないまま終わっていく様がとても現実的で、感慨深かったです。演出においてガツン! と感情があふれる大きなコマ、もしくは一枚絵があるとより研ぎ澄まされた作品になっていたと思います。
自分が描いた作品が1人でも多くの方の目に止めていただくチャンスをこのような形で実現できてとても光栄です! 周りの方々に感謝しています。誠にありがとうございます…!!
賞金60万円+ワコム製ペンタブレット「Wacom Intuos Small ワイヤレス」
老杉の神様
村松昇汰(22)
50ページ
独特な雰囲気がとても魅力的なハイファンタジー作品。読み味はシリアス寄りだからこそ、作者がところどころ挟んでくる笑いのシーンがよく効いていて、作りが上手いと思いました。地に足のついた登場人物もしっかり描けているので、次は現代ものなど、異なるジャンルの物語にもチャレンジしてほしいですね。
世界の中で生きるちっぽけな登場人物に寄り添い、キャラクターの心情等の中見と、デザイン等の外見の両面を大切にした漫画を描けるよう精進していきたいと思います。
賞金30万円
イヴァン
星ノ下幽樹(21)
86ページ
この壮大な物語を描き切る作者の熱量とド根性がすごい! 絶望と飢饉のなかで主人公が死に物狂いで生にすがる話でしたが、最後はほんの少し明るさが見えて、大変いい読み味でした。化物のファンタジー設定をもっと詰めていればよりよかったです。
準入選ありがとうございます! 現在新しい企画を構想中なので、早く読者の皆様に届けられるよう精進します!
賞金30万円
汚れた感じの白
鳳朔(23)
40ページ
演出、雰囲気と絵柄が優れている作品でした。独特なアングルで描かれた、躍動感あふれるバレエの見開きは特によかったですね! スッと入ってくるシンプルな話だからこそ、ラストにもう一つ意外性のある展開やサプライズが読みたくなりました。
準入選ですか、めっちゃ嬉しいです! 冬が来るたびこの子たちを思い出しては、きっと頑張れるでしょう。さあ、ぼくときみに乾杯!
賞金30万円
メタルちゃん
ふみん
58ページ
ストーリーも絵柄も王道で、楽しく読みました! 人物の造形がキャッチーで、生き生きとした豊かな表情もよく描けていて非常によかったです。途中で視点が主人公からヒロインに変わりますが、これが少しわかりづらかったです。今後は物語の構造も工夫できるとまた一段と完成度が上がるでしょう。
準入選ありがとうございます。より良い作品が描けるよう今後も精進していきたいです。
賞金30万円
温室の肉たち
鳴屋(30)
20ページ
黒々とした残酷な世界観と、薄皮を剥がしていくような不穏な見せ方に引き寄せられて、ぐいぐい読み進めました。すごい吸引力。題材は読む人を選ぶかもしれませんが、ホラーとしては文句なしの出来ですし、一部の読者にとことん刺さると思いました。
好きなものを描いて肯定していただいたのが一番嬉しいです。描きたいものがまだたくさんありまして、これからも精進いたします。
賞金10万円
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