総評

選考委員・安野モヨコ氏（『働きマン』『シュガシュガルーン』『ハッピー・マニア』）

全体的にとてもレベルが高かったです。
投稿作ならではの未熟な部分が少なく、非常に読みやすい、技術の高い作品ばかりでした。
自分が投稿者の年齢時にプロとして描いていたものよりも数倍上だなと感じます。
様々な作品や勉強できるサイトなどを読んで努力している人がたくさんいるんだなと思うと嬉しいです。みんな頑張れ。私も頑張る。
作品の傾向としては、心の細やかな葛藤をうまく表現した作品が多かった印象です。
その心のひだを描けることは漫画の良さでもあるので、もちろん悪いことではありませんが、次に描く作品ではもう少し自分の外に広がっていくような物語にもチャレンジしてみてほしいです。

編集長総評

漫画では、実際に登場人物が喋った台詞のほかに、登場人物が頭の中で考えた思い――モノローグも文字で書き表されます。
漫画の中ではどんな思いもモノローグを使えば読者に伝えられて便利なのですが、面白味を削ぐこともあります。
現実世界では人の思いや気持ちを正確に伝えることは難しいですし、文字にすることすら困難だからです。
漫画の中でも、人に伝えにくい微細な思いがインスタントに伝わってしまえばそれはもはや絵空事です。
もどかしさも一緒に表現することこそ物語の醍醐味と言えます。
今回大賞を受賞した『修羅と華』、作中にモノローグは一切ありません。
伝わらなかった人の思いをぜひ味わってみてください。